日本人のサッカー選手が積極的に海外挑戦をするようになり、メディアでも頻繁に現地での活躍が取り上げられるようになりました。
最も大事なことはプレイでチームに貢献できることですが、度々話題になるのが選手の語学力です。特に試合に出られなかったり、調子が上がらない時に語学力の問題を指摘されることが多いように思います。
現在ヨーロッパで活躍する選手たちの様子から、海外でプレーする上での語学やコミュニケーションの問題を考えてみます。
目次
現地の言葉で話せることの大切さ
チーム内でコミュニケーションを取る
何と言っても、現地語を流暢に話せることが一番望ましいです。基本的にチーム内のコミュニケーションは現地の言葉で行われます。
監督、チームメイトと確実な意思疎通を図るためには、現地の言葉で話せることが大切です。練習や試合だけでなく、ピッチの外でも自分の考えを伝えるために、積極的に言葉を習得することが求められます。
ドイツで長年プレーしている長谷部誠は、ドイツ語を流暢に話すことで有名です。彼はチームメイトとも積極的にコミュニケーションを取り、ドイツに移籍してから半年ほどである程度の会話ができるようなったそうです。
意思表示をしなければパスが来ない
海外に移籍した日本人選手が、日本のメディアのインタビューでよく環境の違いについて話をしていますが、彼らの口からよく聞くのは「チームメイトから想像以上にパスが来ない」ことです。これは、1対1を大事にする海外の文化もありますが、何よりその選手がどんなプレーをしたいか、どんなパスがほしいかが分からないから、出さないのです。
香川真司がセレッソ大阪からドルトムントに移籍した当初、練習や試合でプレーしていく内に自然とパスが集まったと言っていましたが、これは非常に稀な例です。彼の当時の活躍ぶりを見れば納得できますが、他の多くの日本人選手はまずこの問題に悩まされるはずです。
また、移籍をして初めの数年間は通訳を帯同する選手が多いようですが、中には通訳を付けることを禁止したり、直接話ができない選手を起用しない監督もいます。現在、ガンバ大阪で活躍中の宇佐美貴史は、ホッフェンハイムに在籍していた当時、このような状況を経験しています。
チームの環境によるところも大きいですが、言語は一朝一夕で身につくものではありませんから、色々な状況を想定して準備をしておく必要があると思います。
サポーターの信頼を得る
これはプレーに関することではありませんが、サポーターは外国人選手が現地の言葉を話すことに好印象を持ちます。
その国やチームに溶け込もうとする姿勢を評価してもらえますので、チームに貢献したいという想いをアピールするためにも公式の場で現地の言葉を話すことは大切です。(セレッソ大阪に入団したディエゴ・フォルランが、入団会見で関西弁を使って挨拶したシーンを思い返してみると、その感覚が分かると思います。)
英語が話せることのメリット
次に、世界中で話されている英語を習得するメリットについて考えてみます。
欧州の主要リーグで英語を公用語とするのはイングランドだけですが、スペイン、ドイツ、イタリアなど他のリーグでプレーする上でもコミュニケーションを取る手段として有効です。特に欧州で生まれ育った選手は、第二言語として話せる監督や選手が多いため、現地語の習得が不十分でも、直接話をすることができます。
現地語の通訳を介して話をする場合、相手に確実に意思を伝えることができますが、自分の想いやその熱量を伝えたい場合、第二言語であっても英語で直接話をした方が気持ちが伝わることが多々あります。
本田圭佑がACミランに入団した際の会見は、全て英語で行われました。イタリア語を習得していない彼は、多くの記者を前に全てのやり取りを英語で行いましたが、自分の口でしっかりと意気込みを語ったことが現地の記者達にも好評だったようです。
また、欧州のチームでプレーを続けていると、良くも悪くも頻繁に移籍の機会が巡ってきます。別の国に移籍することも十分に考えられますので、どこの国でもコミュニケーションを取るために、英語を話せるようにしておくことは効果的であると言えます。
国際審判員は全員英語を話せますので、試合中の審判とのコミュニケーションにおいても役に立ちます。
感情を表に出すトレーニング
最後に、語学と合わせて必要とされる感情表現についても考えてみます。
日本人は、感情を表に出すことがとても苦手だとされています。
これは「和をもって貴しと為す」ということわざがあるように、私たちはとても協調性を大事にする民族で、小さな頃からそれをずっと教え込まれています。必要以上に感情を表に出して主張することは、良しとされていません。
しかし、海外で生活する場合、自分の考えをはっきりと示すことが大切です。何かを話し合って決めるという場では、積極的に発言をすることが求められます。
欧州におけるサッカーは、プロスポーツにおける頂点と言っても過言ではありませんので、選手達は常に野心を持ってプレーしています。そのような状況において他の選手と対等にプレーをするためには、自分の考えを主張して相手に認めてもらう必要があります。(欧州でプレーしている南米の選手達を見ていると、全く言葉が喋れなくても、一つの一つのプレーに対して怒ったり叫んだりして感情を表しているシーンをよく見かけます。)
意見をすることで相手と衝突することもありますが、他の国の人々は日本人ほどそれを後に引きずりません。試合中にさんざん檄を飛ばししていても、試合が終わった後は何事も無かったように話をしていることも多いです。
日本人選手が海外でプレーするためには、このような感情のコントロールをするということも一つの課題になるでしょう。